「動物も言葉が使えるといいなあ」と思う人は多い。実際には動物が言葉を使わなくても、飼主さんとのコミュニケーションは成立している。恐らく、言葉が通じない分、お互いの考えを真剣に推し量るので、分かり合うことができるのだろう。言葉があると細かいことは伝わるが、大事なことを伝えられなかったり、誤解が生じて傷つけることさえある。もし、動物がしゃべることができれば、飼いたいと思う人は減るかも知れない。
ただ、診療をしていく中で、「動物が言葉で飼主さんに伝えたいことがあるのだろう」と思う時がある。動物は飼主さんに「ありがとう」と言いたいけど言葉が使えない。飼主さんには、なぜかその言葉だけが届いていない。そう思う時は、もどかしく切ない。
動物の最期の言葉が飼主さんへの「ありがとう」であることは多く、それが飼主さんに伝ったのかどうか、いつも気になる。